よりそうこころの在宅クリニック

コラム

rTMSを検討する前に知っておきたいこと|うつ病治療の選択肢と相談先

2026/10/23

「薬を飲み続けているのに、うつ症状がなかなか良くならない」
「rTMSという治療を知ったけれど、自分が受けられるのかわからない」

うつ病の治療を続ける中で、このような悩みを抱えている方は少なくありません。近年、薬物療法以外の選択肢として「rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)」が注目されています。一方で、rTMSは誰でも受けられる治療ではなく、対象となる条件や通院の負担など、事前に知っておきたい点がいくつかあります。

この記事では、rTMSの基本的な仕組みや対象となる方、検討する前に確認しておきたいポイント、rTMS以外の治療の選択肢、そして相談先について解説します。

rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)とは

磁気を用いて脳の働きに働きかける治療

rTMSは、頭に当てた専用の装置から磁気を発生させ、脳の特定の部位を繰り返し刺激する治療法です。うつ病では、気分や意欲に関わる脳の前頭前野(左背外側前頭前野)の働きが低下していると考えられており、この部位を刺激することで症状の改善を図ります。

麻酔や手術を必要とせず、治療中も意識がある状態で受けられる点が特徴です。

日本での承認と保険適用

日本では、うつ病の治療機器として2017年に承認され、2019年6月から、抗うつ薬で十分な効果が得られない成人のうつ病を対象に保険適用となりました。ただし、保険診療でrTMSを行うには、医療機関側にも施設や医師に関する基準が定められており、実施できる医療機関は限られているのが現状です。

rTMSの対象となる方・注意が必要な方

保険診療で対象となる主な条件

保険診療でrTMSを受けるには、主に次のような条件を満たす必要があります。

  • 18歳以上であること
  • うつ病と診断されていること
  • 抗うつ薬を十分な量・期間使用しても、効果が十分に得られなかったこと
  • うつ病の重症度が中等症以上であること

なお、双極性障害(躁うつ病)のうつ状態や、認知症・身体の病気が原因で生じている気分の落ち込みなどは、保険診療の対象外となります。また、強い希死念慮がある場合や、妄想などの精神病症状を伴う重いうつ状態では、ほかの治療が優先されることがあります。

治療を受けられない・注意が必要な方

rTMSは磁気を用いるため、次のような方は治療を受けられない、または慎重な判断が必要となります。

  • 頭の中に金属(脳動脈瘤クリップ、人工内耳など)が入っている方
  • 心臓ペースメーカーなどの医療機器を使用している方
  • てんかんやけいれん発作の既往がある方
  • 妊娠中の方

適応の判断は、問診や検査をもとに医師が総合的に行います。

rTMSを検討する前に確認しておきたいこと

うつ病の診断と現在の治療が適切か

「薬が効かない」と感じる背景には、さまざまな理由が考えられます。たとえば、実際には双極性障害であった場合や、甲状腺の病気など身体の不調が影響している場合、睡眠障害や発達特性が関係している場合などは、うつ病の治療だけでは十分な改善が得られないことがあります。

また、薬の種類や量、服用期間が適切か、飲み忘れや副作用で十分に服用できていないかといった点も重要です。rTMSを検討する前に、まずは診断と現在の治療内容をあらためて見直すことが大切です。

通院の負担を考える

rTMSは1回で終わる治療ではありません。一般的には1回あたり約40分の治療を、週4〜5回、約6週間にわたって続けます。医療機関によっては入院して治療を行う場合もあります。

うつ症状によって外出が難しい方や、仕事・家庭の事情で連日の通院が困難な方にとっては、大きな負担となることがあります。治療を始める前に、通院を続けられるかどうかも含めて検討しておく必要があります。

保険診療と自費診療の違い

rTMSは、保険診療のほかに自費診療として提供している医療機関もあります。自費診療では保険診療の条件に当てはまらない方も治療を受けられる場合がありますが、費用は全額自己負担となり、使用する機器や刺激方法、治療回数も医療機関によって異なります。

費用や治療内容、治療後のフォロー体制について、事前に十分な説明を受けたうえで判断することが大切です。

起こり得る副作用

rTMSの主な副作用として、刺激部位の痛みや不快感、頭痛などが報告されています。多くは治療を重ねるうちに軽くなるとされていますが、まれにけいれん発作が起こる可能性もあります。治療中に気になる症状が現れた場合は、すぐに担当医へ伝えましょう。

rTMS以外のうつ病治療の選択肢

うつ病の治療は、rTMSだけではありません。症状や生活状況に応じて、次のような方法を組み合わせて治療を進めます。

休養と環境調整

うつ病の治療では、心身を十分に休ませることが基本となります。仕事や家事の負担を減らす、休職を検討するなど、症状を悪化させている環境を整えることも治療の一部です。

薬物療法の見直し

抗うつ薬にはさまざまな種類があり、薬の変更や追加、量の調整によって症状が改善するケースもあります。睡眠や不安などの症状に合わせた薬を併用することもあります。

精神療法・カウンセリング

認知行動療法では、物事の受け止め方や行動のパターンを整理し、気分の落ち込みにつながりやすい考え方を見直していきます。薬物療法と組み合わせることで、再発予防にもつながると考えられています。

電気けいれん療法(ECT)

重いうつ状態や、食事がとれないなど身体的に危険な状態にある場合には、入院のうえで電気けいれん療法が検討されることもあります。

rTMSについて相談できる場所

まずはかかりつけの精神科・心療内科へ

rTMSに関心がある場合は、まず現在通院している主治医に相談しましょう。これまでの治療経過をよく知る医師が、rTMSの適応があるかどうか、ほかに見直すべき治療がないかを判断します。保険診療でrTMSを受ける場合は、主治医からの紹介状が必要となるのが一般的です。

通院が難しい場合も相談は可能です

うつ症状が強く外出が難しい方や、ご家族が受診を勧めても通院できない場合は、訪問診療やオンライン診療を利用する方法もあります。ご自宅で医師に相談できるため、外出の負担を抑えながら治療を続けることができます。

よりそうこころの在宅クリニックでできること

尼崎市小中島にあるよりそうこころの在宅クリニックでは、訪問診療とオンライン診療を中心に、うつ病をはじめとしたこころの不調の診療を行っています。

当クリニックでは、精神保健指定医・精神科専門医が、これまでの治療経過や生活状況を丁寧にお伺いし、診断や薬物療法の見直しを行います。内科専門医も在籍しており、身体の不調が気分に影響していないかといった点も含めて確認できる体制を整えています。

また、心理士による訪問・オンラインでのカウンセリングや心理検査にも対応しており、薬物療法と精神療法を組み合わせた治療が可能です。rTMSを含めたほかの治療法が適していると考えられる場合には、ご本人やご家族と相談しながら、必要に応じて専門の医療機関へのご紹介も行います。

「今の治療を続けてよいのかわからない」「rTMSが自分に合うのか相談したい」「家族が外出できず受診につなげられない」といったお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

rTMSは、薬で十分な効果が得られないうつ病に対する治療の選択肢のひとつです。一方で、対象となる条件や通院の負担、費用など、検討する前に確認しておきたい点も多くあります。

大切なのは、rTMSだけにとらわれず、診断や現在の治療内容を見直したうえで、ご自身に合った治療を選ぶことです。一人で悩まず、まずは医師に相談することから始めてみてください。

記事監修医師

本 将昂院長

本 将昂 院長
精神保健指定医
日本専門医機構認定 精神科専門医

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