コラム
外出が困難な解離性障害の方へ|在宅精神科医療という選択肢
2026/01/09
解離性障害により外出が困難になっている方にとって、医療機関への通院は大きな壁となります。「病院に行きたいけれど、途中で解離が起きたらどうしよう」「人混みが怖くて外に出られない」「家から一歩も出られない状態が続いている」そんな不安を抱えながら、必要な治療を受けられずにいる方も少なくありません。尼崎市のよりそうこころの在宅クリニックでは、解離性障害の方に対する訪問診療を行っております。ご自宅という安心できる環境で、精神科専門医による診察と治療を受けることができます。こちらでは、解離性障害の基本的な理解から、訪問診療のメリット、実際の診療内容まで、精神科専門医が詳しく解説いたします。
解離性障害とは
解離性障害は、強いストレスやトラウマ体験により、通常は統合されている意識・記憶・知覚・アイデンティティなどが分離してしまう状態です。私たちの心は、耐えがたい苦痛から自分を守るために、意識の一部を切り離すという防衛機制を持っています。この防衛機制が過度に働いた結果が、解離性障害と考えられています。
解離性障害にはいくつかのタイプがあります。解離性健忘は、重要な個人的情報の記憶が抜け落ちてしまう状態です。数時間から数日、場合によっては数年単位の記憶が失われることがあります。解離性同一性障害(かつて多重人格障害と呼ばれていた状態)は、2つ以上の異なる人格状態が存在し、それぞれが交代して現れる状態です。離人感・現実感消失症は、自分自身や周囲の世界が非現実的に感じられる状態で、「自分が自分でない感じ」「世界がガラス越しに見えるような感じ」などと表現されます。
解離症状は、幼少期の虐待やネグレクト、性的被害、重大な事故や災害の体験、愛する人の突然の死、繰り返される暴力などの強いトラウマ体験が背景にあることが多いとされています。これらの体験により、心理的な苦痛があまりにも大きく、通常の処理能力を超えてしまった結果、記憶や感情を意識から切り離すことで、心を守ろうとします。
解離性障害と外出困難
解離性障害のある方が外出に困難を感じる理由はさまざまです。
解離症状そのものが外出を妨げることがあります。外出中に解離が起きると、自分がどこにいるのか分からなくなったり、記憶が飛んでしまったりする恐怖があります。過去に外出中に解離症状が出て、怖い思いをした経験がある方も少なくありません。また、人混みや騒音、明るい光などの刺激が、解離症状を引き起こすきっかけになることもあります。
不安障害やパニック障害を併存していることも多く、これらが外出を困難にします。「また症状が出るのではないか」という予期不安が強く、家から出られなくなってしまいます。公共交通機関を利用することへの恐怖、人が多い場所への恐怖などが重なり、通院そのものが大きなストレスとなります。
トラウマ体験の影響も大きいです。外の世界が危険に感じられ、安全な場所は自宅だけという感覚になってしまいます。特定の場所や状況が、トラウマ記憶を思い出させる引き金(トリガー)になることがあり、それを避けるために外出を控えるようになります。また、人との接触そのものが恐怖や苦痛を引き起こすこともあります。
身体症状を伴うことも少なくありません。外出しようとすると、激しい動悸、息苦しさ、めまい、吐き気などの身体症状が現れ、物理的に外出が困難になります。これらの症状は、不安やストレスによって引き起こされるものですが、本人にとっては非常に苦しいものです。
こうした状況の中で、「病院に行かなければ」と思っても、通院そのものが大きなハードルとなってしまいます。結果として、必要な治療を受けられず、症状が悪化したり、孤立が深まったりする悪循環に陥ることがあります。
在宅精神科医療という選択肢
訪問診療は、精神科専門医がご自宅を訪問し、診察と治療を行う医療サービスです。通院が困難な方に対して、住み慣れた環境で専門的な医療を提供することを目的としています。
保険診療として認められており、通院と同様に健康保険が適用されます。訪問の頻度は、症状や状態に応じて、月に1回から週に1回程度まで柔軟に設定できます。訪問時には、医師による診察、薬の処方、心理的サポート、ご家族への相談対応などを行います。
解離性障害の治療には、薬物療法と精神療法の両方が重要です。訪問診療でも、これらの治療を適切に提供することができます。また、実際の生活環境を医師が直接確認できることで、より具体的で実践的なアドバイスが可能になります。
訪問診療のメリット
解離性障害の方にとって、訪問診療には多くのメリットがあります。
最も大きな利点は、安全で安心できる環境で診察を受けられることです。ご自宅は、ご本人にとって最も安全と感じられる場所です。慣れた環境で、リラックスした状態で医師と話すことができます。外出による刺激やストレスがないため、解離症状が起こりにくくなります。また、通院途中で症状が出るのではないかという不安から解放されます。
通院のストレスがなくなることも重要です。家を出る準備、移動、待合室での待機、見知らぬ人々との接触など、通院に伴うすべてのストレスが軽減されます。予約の時間に遅れる心配もなく、自分のペースで診察に臨むことができます。これにより、治療に集中できるようになります。
生活環境を医師が直接確認できることで、より適切な治療が可能になります。ご自宅の環境、生活リズム、どのような時に症状が出やすいかなどを、医師が実際に見て理解することができます。そのため、環境調整や生活習慣の改善について、具体的で実践的なアドバイスができます。また、ご家族の様子も直接確認でき、ご家族へのサポートも充実させることができます。
治療の継続性が高まることも大きなメリットです。通院が困難で治療が中断してしまうことを防ぎ、安定した治療関係を築くことができます。定期的な訪問により、症状の変化を継続的にモニタリングし、必要に応じて治療を調整していくことができます。治療者との信頼関係が深まることで、トラウマや解離症状について、より深く話せるようになることもあります。
訪問診療での解離性障害の治療
訪問診療では、通院と同様の専門的な治療を提供することができます。
精神科専門医による診察では、現在の症状の評価、解離症状の頻度や程度の確認、気分や不安の状態の評価、身体症状の確認などを行います。ご自宅という安心できる環境だからこそ、症状について詳しく話していただけることも多いです。
薬物療法については、解離性障害そのものに対する特効薬はありませんが、併存する症状に対して薬を使用することがあります。不安や緊張を和らげる薬、睡眠を改善する薬、うつ症状に対する抗うつ薬、フラッシュバックや過覚醒を軽減する薬などです。訪問診療では、薬の効果や副作用を継続的にモニタリングし、ご本人の状態に合わせて調整していきます。
支持的精神療法も重要な治療の柱です。訪問診療の中で、医師との対話を通じて、安全な環境での対話により、少しずつ症状について話していくことができます。トラウマ体験や解離症状について、無理なく、ご本人のペースで向き合っていけるようサポートします。日常生活での困りごとに対する具体的なアドバイスや、症状への対処法を一緒に考えていきます。
生活環境の調整についてもアドバイスいたします。刺激を減らすための環境調整(照明、音、色彩など)、安心感を高めるための工夫(好きな物を置く、安全な場所を作るなど)、規則正しい生活リズムの確立、適度な活動と休息のバランスなどについて、実際の生活環境を見ながら、具体的な提案ができます。
グラウンディング技法(現実感を取り戻す方法)の指導も行います。解離症状が起きそうな時や起きた時に、現実に意識を戻すための技法です。五感を使った方法(冷たい水に手を浸す、好きな香りを嗅ぐなど)、呼吸法、体を動かす方法など、ご本人に合った方法を一緒に見つけていきます。
心理士によるサポート
よりそうこころの在宅クリニックでは、医師の訪問診療に加えて、心理士による訪問カウンセリングも提供しております。
解離性障害の治療には、トラウマに焦点を当てた心理療法が有効とされています。EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)、PE療法(持続エクスポージャー療法)、認知処理療法などのトラウマ治療がありますが、これらは症状が一定程度安定してから、慎重に進めていく必要があります。
訪問カウンセリングでは、まず安全な治療関係を築くことから始めます。ご自宅という安心できる環境で、少しずつ心理士との信頼関係を深めていきます。焦らず、ご本人のペースで、症状の理解、対処法の習得、必要に応じたトラウマ治療などを進めていきます。
ご家族へのサポート
訪問診療では、ご本人への治療だけでなく、ご家族へのサポートも重要な役割です。
解離性障害のあるご家族を支えることは、身体的にも精神的にも大きな負担となります。症状への対応方法が分からず、戸惑うこともあるでしょう。ご本人が外出できないことで、社会的に孤立しがちになることもあります。
訪問診療では、ご家族からの相談にも時間をかけて対応いたします。解離性障害についての正しい理解を深めていただき、症状が出た時の対応方法、日常生活での接し方、ご家族自身のケアの重要性などについてアドバイスいたします。
ご家族が疲弊してしまわないよう、利用可能な福祉サービスの情報提供や、必要に応じて他の支援機関との連携もサポートいたします。ご家族が元気でいることが、ご本人の回復にもつながります。
よりそうこころの在宅クリニックの訪問診療
尼崎市小中島にあるよりそうこころの在宅クリニックでは、解離性障害の方に対する専門的な訪問診療を提供しております。精神科専門医が定期的にご自宅を訪問し、お一人おひとりの状態に合わせた医療とサポートを行います。
当クリニックの医師は、トラウマ関連障害や解離性障害の診療経験が豊富であり、ご本人のペースを尊重した治療を心がけております。急がず、焦らず、安全に、ご本人が回復に向かえるよう、長期的な視点でサポートいたします。
訪問診療の対象地域は、尼崎市を中心に、大阪市、豊中市、吹田市、西宮市、伊丹市など近隣地域にも対応しております。詳しい訪問可能エリアについては、お電話でお気軽にお問い合わせください。
また、オンライン診療にも対応しております。訪問診療とオンライン診療を組み合わせることで、より柔軟な医療提供が可能です。例えば、月に1回は訪問診療、その間にオンライン診療で経過を確認する、といった形も可能です。
訪問診療を始めるために
訪問診療の開始を検討されている方は、まずはお電話でご相談ください。現在の症状、外出が困難な理由、生活状況などをお伺いし、訪問診療が適しているかどうかを判断いたします。
訪問診療の対象となるのは、外出が著しく困難な方です。解離症状により通院が難しい方、不安やパニックで外出できない方、トラウマの影響で外の世界が怖く感じられる方などが該当します。すでに他の医療機関に通院されている場合でも、通院の負担が大きい場合には、訪問診療への切り替えをご相談いただけます。
費用については、健康保険が適用されます。自己負担額は、保険の種類や所得に応じて異なりますが、通院と同様の負担割合です。訪問診療には、診察料、訪問料、処方料などが含まれます。詳しい費用については、お問い合わせの際にご説明いたします。
初回訪問までに準備していただくものは、健康保険証、各種医療証(お持ちの場合)、お薬手帳(服薬中の薬がある場合)、精神障害者保健福祉手帳(お持ちの場合)、これまでの診療情報(紹介状や診断書など、あれば)です。また、現在の症状や困っていることをメモしていただくと、初回の診察がスムーズになります。
まとめ
解離性障害により外出が困難でお困りの方、必要な治療を受けられずにいる方は、尼崎市のよりそうこころの在宅クリニックにお気軽にご相談ください。訪問診療という選択肢により、ご自宅で安心して専門的な医療を受けることができます。
解離性障害の回復には時間がかかることもありますが、適切な治療とサポートにより、症状は改善していきます。安全な環境で、ご自身のペースで、少しずつ回復に向かっていけるよう、私たちがサポートいたします。
「外に出られない自分はダメだ」と自分を責める必要はありません。今のあなたの状態は、過去の辛い経験から自分を守ろうとした結果です。その防衛が今は生活を制限してしまっていますが、適切な治療により、少しずつ楽になっていくことができます。
一人で悩まず、まずはお電話でご相談いただくことをお勧めいたします。ご家族からのお問い合わせも歓迎いたします。あなたの回復に向けて、私たちができることをご一緒に考えていきましょう。
記事監修医師

本 将昂 院長
精神保健指定医
日本専門医機構認定 精神科専門医