よりそうこころの在宅クリニック

コラム

強迫性障害(OCD)とは?症状・原因・治療法を精神科専門医が解説

2025/12/05

強迫性障害(OCD)は、自分の意思に反して不安や恐怖を感じ、それを打ち消すために特定の行動を繰り返してしまう精神疾患です。「何度も手を洗ってしまう」「鍵の確認が止められない」「ガスの元栓を閉めたかの確認を何度もしてしまう」といった症状により、日常生活に大きな支障をきたします。尼崎市のよりそうこころの在宅クリニックでは、強迫性障害の専門的な診断と治療を行っております。こちらでは、強迫性障害の症状、原因、効果的な治療方法について精神科専門医が詳しく解説いたします。

強迫性障害(OCD)とは?基本的な理解

強迫性障害(OCD: Obsessive-Compulsive Disorder)は、本人の意思に反して頭に浮かぶ不快な考えやイメージである「強迫観念」と、それを打ち消すために行う繰り返し行動である「強迫行為」を特徴とする精神疾患です。日本における強迫性障害の有病率は人口の約1〜2%とされ、決して珍しい病気ではありません。

多くの方が「火を消し忘れたかもしれない」と不安に感じることはありますが、強迫性障害では、この不安が異常に強く、何時間も確認行為を繰り返すなど、日常生活が困難になるほどの症状が現れます。これは脳内の神経伝達物質、特にセロトニンの機能異常が関係していると考えられており、「性格の問題」や「気の持ちよう」ではなく、脳の機能的な問題による疾患です。適切な治療により改善が期待できます。

強迫性障害の代表的な症状

強迫性障害の症状は、「強迫観念」と「強迫行為」の二つから構成されています。強迫観念は本人の意思に反して繰り返し頭に浮かんでくる不快で不合理な考えやイメージで、「ばかばかしい」と頭では分かっていても、自分ではコントロールできず、強い不安や恐怖を感じてしまいます。

最も多く見られるのが不潔恐怖や汚染恐怖です。「汚れやばい菌が付いているのではないか」「病気になるのではないか」という過度な恐怖を感じ、ドアノブや手すりに触れることができなくなります。他人が触ったものや公共の場所を極端に避けるようになり、外出が困難になることもあります。

確認への強迫観念も頻繁に見られます。「鍵をかけ忘れたのではないか」「ガスの元栓を閉め忘れたのではないか」といった疑念が繰り返し浮かび、確認しても安心できず、何度も確認を繰り返してしまいます。加害恐怖では「自分が誰かを傷つけてしまうのではないか」「車を運転中に人をひいてしまったのではないか」という恐怖に襲われ、実際には何も起きていないにもかかわらず、強い罪悪感や不安を感じます。

強迫行為は、強迫観念によって生じた不安を打ち消すために行う繰り返しの行動です。洗浄行為では、手洗いを何十回、時には何時間も繰り返したり、入浴に数時間かけたりします。手が荒れて出血するほど洗い続けても止められず、日常生活に大きな支障をきたします。確認行為では、鍵やガスの元栓、電気のスイッチなどを何度も確認し、確認回数が決まっていることもあります。「10回確認しないと安心できない」といった独自のルールに縛られ、確認のために外出できなくなったり、遅刻を繰り返したりすることもあります。

以下のような症状が長期間続き、日常生活に支障をきたしている場合は、強迫性障害の可能性があります。

  • 手洗いや入浴に異常に時間がかかる(1時間以上)
  • 鍵やガスの確認を何度も繰り返し、外出が困難になる
  • 汚れやばい菌への恐怖で、特定の場所や物に触れられない
  • 物の配置や順序にこだわり、少しでもずれると強い不安を感じる
  • これらの症状のために、日常生活や仕事に支障が出ている
  • 症状をコントロールできず、1日1時間以上を強迫行為に費やしている

これらの症状が数週間以上続いている場合は、尼崎市の精神科専門医にご相談ください。

強迫性障害の原因

強迫性障害の発症には、生物学的要因、心理的要因、環境的要因など、複数の要因が複雑に関係しています。脳内神経伝達物質、特にセロトニンの機能異常が最も重要な原因の一つです。脳画像研究では、前頭葉、大脳基底核、帯状回などの活動異常が確認されており、これらの領域間の情報伝達がうまくいかないことで、「危険かもしれない」という警報が過剰に作動し、それを止められなくなると考えられています。

遺伝的な要素も関係しており、家族内で強迫性障害の発症が見られることがあります。ただし、遺伝だけで発症するわけではなく、環境的な要因との相互作用が重要です。性格傾向としては、完璧主義、責任感が強い、几帳面、心配性といった特徴を持つ方に発症しやすい傾向があります。「失敗してはいけない」「常に完璧でなければならない」という思考パターンが、強迫観念を強化してしまうことがあります。

また、幼少期の厳しいしつけ、トラウマ体験、強いストレスが発症のきっかけになることもあります。妊娠・出産、引っ越し、就職などの人生の大きな変化が、症状の発現や悪化のきっかけになることも知られています。

強迫性障害の治療法

尼崎市のよりそうこころの在宅クリニックでは、科学的根拠に基づいた強迫性障害の治療を提供しています。強迫性障害の治療には、薬物療法と認知行動療法を組み合わせることが最も効果的とされています。

薬物療法では、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬が使用されます。SSRIは脳内のセロトニンの働きを改善することで、強迫観念や強迫行為を軽減する効果があります。効果が現れるまでに2〜3ヶ月程度かかることがあり、また通常のうつ病治療よりも高用量が必要になることがありますが、医師の指示に従い、根気強く服薬を継続することが重要です。副作用としては、吐き気、眠気、食欲の変化などが見られることがありますが、多くは服用開始後の一時的なものです。

強迫性障害に最も効果的な心理療法が、認知行動療法の一つである「曝露反応妨害法(ERP)」です。この治療法では、恐れている状況にあえて身を置き(曝露)、その際に強迫行為を行わない(反応妨害)ことで、不安が自然に減少することを学習していきます。例えば、不潔恐怖のある方の場合、少し汚れたものに触れた後、手を洗わずに一定時間我慢する練習を行います。最初は強い不安を感じますが、時間とともに不安が自然に減少していくことを体験することで、「強迫行為をしなくても大丈夫」という新しい学習が成立します。

認知療法も併せて行われることがあります。強迫性障害の方は、危険を過大評価したり、責任を過度に感じたりする思考パターンを持っていることがあります。「手を洗わなければ必ず病気になる」という極端な思考を、「適度な手洗いで十分である」というより現実的な考え方に修正していくことで、強迫症状の軽減を図ります。

日常生活での対処法

専門的な治療と並行して、日常生活での工夫も症状の改善に役立ちます。まず重要なのは、「これは病気の症状である」と認識することです。「自分の性格が悪い」「意志が弱い」と自分を責める必要はありません。強迫行為を急に完全にやめることは困難ですが、少しずつ減らしていくことが大切です。確認行為が10回の場合、まずは8回に減らすことを目標にするなど、段階的に取り組みます。

ご家族は、本人の強迫行為に巻き込まれないように注意が必要です。「本当に鍵は閉まっているか確認して」といった依頼に応じ続けると、症状を強化してしまうことがあります。一方で、症状を頭ごなしに否定したり、叱ったりすることも逆効果です。「大変だね」と共感を示しながら、専門医の治療を受けることを勧めましょう。

十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、症状の安定に役立ちます。過度のカフェインやアルコールは避け、規則正しい生活リズムを維持することが大切です。

よりそうこころの在宅クリニックでの強迫性障害治療

尼崎市小中島にあるよりそうこころの在宅クリニックでは、強迫性障害でお困りの方に対して、専門的な診断と治療を提供しております。精神科専門医が症状を丁寧にお伺いし、お一人おひとりの状態に合わせた治療計画を立案いたします。薬物療法については、効果と副作用を慎重に評価しながら、最適な薬剤と用量を調整していきます。また認知行動療法においては公認心理士とともに治療計画を立案します。

当クリニックでは、通院が難しい方には訪問診療、忙しい方や遠方の方にはオンライン診療にも対応しております。強迫性障害の治療には、ご家族の理解と協力が不可欠であり、ご家族への情報提供や対応方法についてのアドバイスも行っております。

強迫性障害は適切な治療により、多くの方が症状の大幅な改善を経験しています。「何度も手を洗ってしまう」「鍵の確認が止められない」といった症状でお悩みの方は、尼崎市のよりそうこころの在宅クリニックにお気軽にご相談ください。一人で悩まず、まずは専門医にご相談いただくことをお勧めいたします。早期に適切な治療を開始することで、症状の改善と生活の質の向上が期待できます。

記事監修医師

本 将昂院長

本 将昂 院長
精神保健指定医
日本専門医機構認定 精神科専門医

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